在留資格『特定技能』での就労について
『特定技能』とは、今般の深刻な人手不足を解消するために新しく創設された在留資格です。原則、日本で外国人の方が就労するには「専門的な知識や技術を持っている」ことが必要になります。一般的な就労系在留資格『技術・人文知識・国際業務』の取得条件にあたります。つまり外国人の方が専門的知識・技術を要しない、現場での仕事に就くことが難しい状況にあります。
人手不足の各現場では留学生などをアルバイトとして採用していますが、『留学』の在留資格では資格外活動許可をとって週28時間上限という制約があります。『技能実習』という在留資格もあり、多くの外国人の方がこの資格で現場就労に従事していますが、在留資格『技能実習』は人材育成・技術の母国への移転という国際協力が目的となっているので、作業内容、在留期間に多くの制約があります。
この状況に対応する為、外国人の方が、現場での就労が行える新しい在留資格『特定技能』が創設されています。
この在留資格が創設されたことで人手不足の現場労働に外国人労働者を採用することができ、学歴などの条件が揃わないため、『技術・人文知識・国際業務』などの就労系在留資格が所得できない外国人の方も日本で就労する機会を得ることができるようになりました。
では、『特定技能』で採用・就労することができる条件を説明していきます。
『特定技能』で採用を予定する会社について・・
★国が指定した特定産業分野に該当している
1.介護 2.ビルクリーニング 3.素形材産業 4.産業機械製造業 5.電気・電子情報関連産業 6.建設 7.造船・舶用工業 8.自動車整備 9.航空 10.宿泊 11.農業 12.漁業 13.飲食料品製造業 14.外食業
現在以上の14業種が指定されています。また業種の中にはさらに固有の基準をもうけているものもあります。この業種・基準に当てはまらないと『特定技能』での採用・就労はできません。(今後、業種が拡大される可能性はあります。)
★中長期在留者の雇用経験があること、または企業に在留者を適正に支援業務ができるであろうとみなされる程度の規模があること
(登録支援機関に支援を委託する場合はこの基準は満たすとみなされます)
★同職種の労働者(パート、アルバイトを除くすべての従業員)が1年以内に非自発的離職をしていない
★1年以内に外国人労働者の行方不明者(会社の責任による)を出していない。
★5年以内に関係法律による刑罰や技能実習の認定の取り消しを受けていない。
★一定の財政的基盤を有していることを証明できる。
★協議会の構成員になること
特定技能外国人を受け入れる機関は制度の適正な運用を図るため、特定産業分野ごとの協議会の構成員になる必要があります。
『特定技能』で就労を予定する外国人について・・
★送り出し国が適正
現在、特定技能外国人送り出し国は3つに分類されます。
①二国間取り決めが締結された主要11か国(フィリピン・カンボジア・ネパール・ミャンマー・モンゴル・スリランカ・インドネシア・ベトナム・バングラディッシュ・ウズベキスタン・パキスタン)
これらの国については日本政府と協力覚書が締結され様々な整備が進んでいます。今後も『特定技能』受け入れの主流であると考えられます。
②上記11か国以外の国
特定技能外国人に国籍要件はありませんので受け入れすることができます。
③日本からの退去強制への非協力を理由に受け入れを認めていない国
特定技能外国人を受け入れることはできません(現在、イラン・イスラム共和国のみ)
★18歳以上である
★従事しようとする業務に必要な相当程度の知識または経験を必要とする技能を有していること
特定技能外国人は即戦力としての就労を予定しているので一定水準以上の知識・技能を有していなければなりません。そのため国内または海外で実施される技能評価試験に合格することが必要です。(ただし技能実習2号を良好に修了していれば免除されます)
国内で行われる技能評価試験は日本に中長期滞在の外国人が受験できますが、退学・除籍となった留学生、技能実習中やインターンシップで滞在中の外国人などは受験対象外ですので注意が必要です。
★日本での生活および従事しようとしている業務に必要な日本語能力を有していること
即戦力として期待されている特定技能外国人は日本語能力についても一定の水準を満たしていることが必要です。そのために国内または海外で実施される試験に合格することが必要で,以下の二つの試験が認められています。(ただし技能実習2号を良好に修了していれば免除されます)
①日本語能力試験(JLPT)・・従来より日本国内をはじめ世界中で開催されている実績のある日本語能力測定試験です。特定技能の要件を満たすためには「N4」に合格する必要があります。
②国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)・・新設された試験ですが、受験機会が多くあり、専ら特定技能の申請を目指すために多くの外国人が受験しています。特定技能の要件を満たすためには「A2」に合格する必要があります。
★健康状態が良好であること
『特定技能』で就労を予定する外国人は日本入国前に本国で健康診断を受けなくてはなりません。日本に在留中の方は日本の医療機関で受けることになります。特定技能在留資格申請に必要な健康診断個人票は検診項目が決まっていて、申請人が十分に理解できる言語での作成が必要です。出入国在留管理局のホームページに参考様式が載っているので、そちらを利用してもらうのがいいでしょう。(現在9か国語に対応しています。)
★特定技能(1号)としての通算在留期間が5年以内であること
特定技能の在留資格は最初、『特定技能1号』からの取得になりますが、(さらに熟練した技術を習得すれば2号に移行できることもあります)この『特定技能1号』の在留資格で在留できる期間は通算で5年です。一時出国中の期間、資格更新や変更の申請期間等も含め、『特定技能1号』での在留が通算5年に達した時点で特定技能の雇用期間の残余や在留期限に関わらず、以後の在留は認められないことになりますので、注意が必要です。
★特定技能外国人の本国での手続きを順守していること
日本政府と特定技能外国人本国との間に二国間取り決めがあり、順守すべき手続きがある場合はその手続きを経ていることが必要となります。
特定技能採用企業と採用予定特定技能外国人が上記の条件を備えていれば特定技能雇用契約を結んでいただけます。契約内容は外国人労働者にとって不利な条件とならないよう、次の基準が必要となります。
☆「相当程度の知識または経験を必要とする技能を有する業務」に従事させる
特定技能外国人の条件にの中に一定の知識・経験を図るテストに合格することがあります。そのため従事する業務内容も一定の知識・経験を要するものとなります。
☆労働時間が通常労働者所定時間と同じ
その企業のフルタイムの労働者(パート・アルバイトではない)の所定労働時間と同等にする必要があります。(特定技能外国人はフルタイムの労働者として予定されています)
☆日本人と同等以上の報酬額を設定
外国人ということを理由に不当に報酬を低くすることはできません。同等の技能知識を有する者は日本人も外国人も同水準の報酬を支払う必要があります。
☆必要な有給休暇を取得させる
特定技能外国人から申し出があったときは労働基準法に基づき必要な有給休暇を所得させなければなりません。また母国の家族との時間を作るため、一時帰国や家族来日の際等にも必要な有給休暇(または無給休暇)を取得できるよう配慮する必要があります。
☆本人が帰国費用を負担できない場合は補助できること
特定技能外国人が帰国する際、自ら帰国費用を負担できないときは、負担する他、帰国についての諸手続きの補助を行う必要があります。(帰国する理由は問いません。ただし行方不明になった場合は除きます。)またこれらを担保する為、特定技能外国人の報酬から控除するなどの契約はできませんので注意してください。
☆定期健康診断の受診(労働者の健康を確保する義務)
一般の労働者と同じように雇用時とその後毎年1回以上受診させる必要があります。また、特定技能外国人の生活状態把握のための措置も必要です。(連絡網の整備、定期的な面談・・等)
☆報酬は口座振り込みにすること
特定技能外国人への報酬支払の確実性、適正性を保持する為、報酬は預金口座へ振り込む必要があります(本人の同意の元で)。
特定技能外国人を雇用すれば、四半期ごとに活動状況届出が必要になりますが、その際に振込明細等を添付してください。
☆保証金の徴収や違約金契約がないことを労使双方で確認している
契約期間を満了せずに退職や失踪することを防止するための保証金や違約金があるという契約をすることは、強制労働につながるおそれが多分にあるとして厳しく禁じられています。そのような契約でないことを労使双方で確認していることが必要です。
☆支援に要する費用を負担させないこと
特定技能外国人に対しては後述する支援が必要になります。この支援に要する費用は雇用する企業側が負担するもので、特定技能外国人に直性的にも間接的にも負担させないこと、またそのことを特定技能外国人に事前ガイダンスにて説明する必要があります。
特定技能外国人への支援について
特定技能雇用契約を締結した機関(企業)は特定技能外国人が日本で適切に生活ができるよう支援を行う必要があります。具体的には以下のような内容になります。
1,事前ガイダンスを実施する
2,出入国時の送迎を行う
3,住居の確保に係る支援を行う
4,生活に必要な契約に係る支援を行う(銀行口座、携帯電話、ライフライン等)
5,入国後、または在留資格変更許可後に生活に係る情報の提供(オリエンテーション)を実施する
6,日本語学習の機会を提供する
7、相談・苦情への対応
8,日本人との交流促進を支援する
9,定期的に面談を行う
10,非自発的離職時に転職についての支援を行う
以上の支援内容について具体的な支援内容を盛り込んだ『支援計画書』を作成し、計画書に基づいた支援を特定技能外国人が十分に理解できる言語で行うことが必要です。初めて外国人を雇う企業などは少しハードルが高い基準かもしれませんが、登録支援機関に支援を委託する場合はこの基準は満たすものとみなされます。
上記準備が整えば、『特定技能1号』の在留資格申請手続きになります。
在留資格『特定技能』での就労についてのご相談・ご不明点についてはこちらからお気軽にお問い合わせください。